「経理として5年経験を積んだけれど、このまま同じ会社で働き続けるのが正解か」「会計事務所で実務を覚えたが、事業会社への転職はどう動けばよいのか」——20代後半から30代の経理・会計人材の多くが、こうしたキャリアの分岐点に立っています。本記事では、経理・会計職の主要キャリアパスを職場タイプ別に整理し、必要資格・年収レンジ・採用市場で評価される経験を、公的統計と一次情報をもとに解説します。
経理・会計人材の年収は職場タイプと専門領域で大きく変動する。事業会社経理は安定型、会計事務所は実務密度型、監査法人・FASは高単価型。20代後半〜30代の転職は、簿記2級+実務3年+次の専門軸(IFRS/英語/税務/管理会計/IPO)の組み合わせで評価が大きく変わる。
目次
経理・会計職を取り巻く2026年の市場環境
経理・会計部門は、これまで「正確に数字を締める」役割が中心でした。しかし2020年代に入り、クラウド会計ソフトの普及、電子帳簿保存法やインボイス制度への対応、IPO予備軍企業の増加、グローバル子会社の連結対応など、業務領域が急速に広がっています。とくにCFO候補や経営企画にもまたがる「攻めの経理」のニーズは、上場準備企業や成長企業を中心に高水準で推移しています。
一方、ルーチン仕訳・記帳業務は自動化が進み、求人で問われるのは「制度会計+もう一つの専門性」になりました。経理人材としての市場価値は、簿記資格の有無だけでなく、決算早期化・連結・IFRS・税務・管理会計・IPOといった専門軸を持っているかどうかで判断されています。
主要キャリアパスの全体像(6つの軸)
経理・会計の代表的なキャリア軸は次の6つに整理できます。同じ「経理」と一括りにされがちですが、求められるスキルも年収レンジも全く異なります。
1. 事業会社経理(一般事業会社のインハウス経理)
もっとも人数が多いキャリア軸です。月次・年次決算、税務申告補助、内部統制対応、開示業務、連結決算など、企業規模に応じて担当範囲が変わります。大手上場企業は分業が進んでおり、中堅以下では一人で広範囲を担うことが多くなります。
2. 会計事務所(税理士法人を含む中小規模事務所)
中小企業の記帳代行、月次巡回監査、税務申告、相続・事業承継対応などを担当します。クライアントワークのスピード感と税務実務の密度が特徴で、税理士科目合格者・税理士補助の入口として位置付けられます。
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3. 監査法人(Big4および中堅監査法人)
上場企業や上場準備企業の財務諸表監査が主業務。公認会計士登録者の主要キャリアであり、IPO支援・IFRS導入支援などのアドバイザリー業務も担います。
4. 税理士法人(中堅以上、Big4税理士法人を含む)
移転価格、国際税務、組織再編税制、相続税申告、税務調査対応など、専門領域に深く踏み込みます。USCPA・税理士・税法修士などの専門資格が前提となるポジションも多くあります。
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5. FAS・コンサルティングファーム
M&Aアドバイザリー、デューデリジェンス、バリュエーション、PMI、企業再生など、ディール領域を扱います。Big4 FAS、独立系ブティック、戦略コンサル系FASなど構造が複雑で、年収の振れ幅も大きい領域です。
6. フリーランス/顧問契約型キャリア
クラウド会計の普及により、複数のスタートアップやSMBに対して「外部経理部長」として関わる働き方が増えています。会社員として一定の実務経験を積んだあと、税理士または公認会計士資格を得て独立するパターンが代表的です。
年収レンジを公的統計で確認する
厚生労働省「賃金構造基本統計調査」では、職種別に賃金データが公表されています。経理・会計関連職の年収レンジは、職場タイプによって以下のように差が出ます。
| キャリア軸 | 20代後半 | 30代 | 40代以降の到達点 |
|---|---|---|---|
| 事業会社経理(中堅) | 400〜500万円 | 500〜650万円 | マネージャー700〜900万円 |
| 事業会社経理(大手・上場) | 450〜600万円 | 600〜800万円 | 部長級1,000〜1,400万円 |
| 会計事務所スタッフ | 350〜480万円 | 500〜700万円 | 所長クラスは要件次第 |
| 監査法人 | 550〜700万円 | 700〜1,000万円 | パートナー1,500万円〜 |
| 税理士法人(Big4等) | 500〜700万円 | 800〜1,200万円 | パートナー1,500万円〜 |
| FAS・M&Aコンサル | 550〜750万円 | 800〜1,300万円 | マネージャー1,500万円〜 |
レンジは厚生労働省「令和6年・令和7年賃金構造基本統計調査」および民間調査の公開値を参考に整理しています。会社規模・業種・地域・等級によって個別の数字は前後しますので、実際の応募時には求人票記載のレンジで確認してください。
必要スキル・必要資格
多くの求人で評価される基本スキル
- 日商簿記2級(事業会社経理の応募下限ライン)/簿記1級は連結・原価計算で評価
- Excel(VLOOKUP/XLOOKUP、ピボット、関数組み合わせ)
- 主要会計システム(freee会計、マネーフォワード、勘定奉行、SAP、Oracle EBSなど)
- 電子帳簿保存法・インボイス制度の実務知識
上位ポジションで評価される専門スキル
- 連結決算・開示(有価証券報告書、内部統制報告書)
- IFRS実務、米国会計基準(USGAAP)
- 税理士科目合格・税理士登録、USCPA、公認会計士
- 英語(読み書き/会議対応)
- IPO準備・上場後の開示体制構築
- 管理会計・FP&A、予実分析、KPI設計
キャリアアップの実例パターン
パターンA:事業会社経理から大手上場企業の連結担当へ
中堅メーカーで単体決算と税務補助を3〜5年経験。簿記2級+連結会計実務を武器に、大手上場企業の連結・開示チームに転職。年収は450万円台から650〜750万円程度へ。次のステップは経営企画兼務やFP&Aへの異動。
パターンB:会計事務所から事業会社の経理マネージャーへ
会計事務所で月次巡回監査と税務申告を5〜7年経験。税理士科目を2〜3科目持ち、IPO準備中の事業会社にCFO直下の経理リーダーとして入社。年収は500〜700万円台で着地し、上場後は数百万円のレンジアップが見込めます。
パターンC:監査法人からFAS・経営企画へ
監査法人で公認会計士として5〜7年勤務後、Big4 FASまたは事業会社の経営企画/IR担当へ。FASならマネージャー昇格時に1,000万円超、事業会社では700〜900万円スタート+ストックオプションのレンジが典型です。
採用市場で評価される経験
採用側の視点で見ると、書類選考を通過しやすい経歴は次の組み合わせです。
- 事業会社経理3年以上+連結または税効果会計の実務
- 会計事務所5年以上+税理士科目2科目以上+事業会社志向
- 監査法人2〜3年+IFRS/IPO関連実務
- USCPA保有+英文経理または海外子会社管理経験
- FAS/M&A経験+事業会社のCFO候補ポジション志望
「経理経験◯年」だけでは差別化が難しい時代になっているため、ポジション設計の段階で次に取りたい専門軸を明確にしておくことが重要です。
よくある質問
未経験から経理に転職するのは難しい?
20代であれば、日商簿記2級+業務経験(経理アシスタント、営業事務など)の組み合わせで未経験採用の入口は確保できます。30代以降は事業会社の中途採用で未経験ハードルが高く、会計事務所や派遣からの実務経験積み上げが現実的なルートです。
会計事務所と事業会社、どちらが先のほうがよい?
税務寄りのキャリア(税理士、独立、相続コンサル)を目指すなら会計事務所スタートが効率的。連結・IFRS・IPO・経営企画寄りなら事業会社スタートか監査法人スタートが王道です。
USCPAは取る価値がある?
外資系経理、海外子会社管理、Big4 FASなど英文会計を扱う環境に出る予定があれば投資対効果は高い資格です。一方で、日系中堅事業会社の経理マネージャー職には簿記1級・連結実務のほうが評価される場合もあるため、目指す業界に応じて選択してください。
まとめ
経理・会計職のキャリアは、職場タイプ×専門軸の掛け算で年収もポジションも大きく変わります。20代後半〜30代の早い段階で「自分はどの軸で深掘りするか」を意識すると、その後の選択肢が大きく広がります。本サイトでは、職種別の転職エージェント比較や税理士試験の難易度解説など、関連記事をまとめています。具体的なキャリア相談先を探したい方は、以下の関連記事もあわせてご覧ください。
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※本記事内の年収レンジは厚生労働省「賃金構造基本統計調査」および公開情報をもとに整理した目安であり、実際の処遇は企業・等級・地域により異なります。応募時は求人票の条件で確認してください。
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