1級電気工事施工管理技士の合格率は一次検定36〜42%、二次検定49〜70%で推移。年収レンジは20代400〜550万円、30代500〜750万円、40代以降は650〜1,000万円超で、監理技術者として大規模工事を任される立場になることで一気に伸びる。
📑 目次
1級電気工事施工管理技士とは
1級電気工事施工管理技士は、建設業法に基づく国家資格で、ビル・工場・データセンター・再生可能エネルギー施設などの電気工事現場で「監理技術者」として配置できる唯一の資格区分です。電気工事一式の請負金額が大規模化するほど、この資格を持つ技術者を社内に何人抱えているかが、企業の受注力そのものに直結します。
具体的には、元請として請負った電気工事のうち、下請への発注総額が4,500万円以上(建築一式は7,000万円以上)になる場合、現場に監理技術者を専任で配置する義務があります。この監理技術者になれるのが、原則として1級電気工事施工管理技士です。2級では主任技術者にとどまり、現場規模・関与できる工事の幅が大きく変わります。
2024年4月の施工管理技術検定制度改正により、第一次検定は実務経験ゼロ・19歳以上であれば誰でも受験可能になりました。合格者は「1級電気工事施工管理技士補」として位置づけられ、監理技術者の補佐としてキャリアを早期に積み始められるようになっています。資格としての価値はむしろ強化されており、20代のうちに一次検定だけでも通しておく動きが業界全体で広がっています。
・大規模電気工事の監理技術者として現場専任
・特定建設業許可(電気工事業)の専任技術者
・経営事項審査で技術職員として最大6点加点
・転職市場での職位・年収レンジ底上げ
受験資格(2024年改正後)
第一次検定の受験資格
年度末時点で19歳以上であれば、学歴・実務経験を一切問わず受験可能です。これは2024年(令和6年度)から導入された新しい仕組みで、建設業界全体の人手不足解消と若手技術者の早期育成を目的としています。第一次検定に合格すると国家資格「1級電気工事施工管理技士補」が付与され、監理技術者の補佐として現場経験を積みやすくなります。
第二次検定の受験資格
第二次検定では実務経験が必須となります。新ルートは「1級技士補取得後+実務経験5年以上」、または「2級電気工事施工管理技士の二次検定合格後+実務経験5年以上」など、複数のパターンが並列で用意されています。実務経験は建設業法で定められた電気工事のみが対象で、設計・営業・受注事務などは原則として実務経験に含まれません。
| ルート | 必要条件 | 必要実務経験 |
|---|---|---|
| 1級技士補ルート | 1級一次検定合格 | 合格後5年以上の実務経験 |
| 2級合格ルート | 2級電気工事施工管理技士(二次)合格 | 合格後5年以上の実務経験 |
| 指定学科ルート(経過措置) | 大学指定学科卒業など | 卒業後3年以上の実務経験 |
| 旧制度ルート(経過措置) | 2028年度までの暫定措置 | 従来の受験資格を選択可 |
経過措置と注意点
新受験資格に完全移行する前のクッションとして、2028年度(令和10年度)までは旧制度の受験資格でも受験できます。ただし、ルートが多いほど判断は複雑になります。所属企業の総務・人事に確認するのが最短です。施工管理職の経験年数の数え方やキャリアの組み立て方は施工管理職のキャリアパス完全ガイド|20代・30代・40代の選択肢と年収にまとめています。
試験内容(一次・二次)
第一次検定(学科)
第一次検定はマークシート方式(四肢択一・五肢択一)で、午前2時間半・午後2時間の合計4時間半におよぶ長丁場です。出題範囲は「電気工学」「電気設備」「関連分野(機械設備、土木、建築)」「設計・契約」「施工管理法(応用能力含む)」「工事施工」「法規(建設業法・電気事業法など)」と広く、得点配分はすべての分野で60%以上が合格ラインの目安です。
近年は「施工管理法(応用能力)」が独立分野として配点比重を増しており、ここで6割未満になると総合点が高くても不合格扱いになる年があります。電気理論や法規だけ強化しても合格できない構造です。
第二次検定(実地)
第二次検定は試験時間3時間。記述式と五肢択一マークシートを組み合わせた形式で、大問6題で構成されています。令和6年度の改正以降、最大配点を占める「経験記述」では、工程管理と安全管理について、自身が経験した工事の管理上の問題点・理由・具体的な対策を記述する形式に変わりました。
過去問の丸暗記では対応できず、自分が担当した現場の具体的なエピソード(規模・工期・チーム編成・トラブル対応など)を、施工管理法のフレームに沿って整理する力が問われます。受験申込時点で「経験記述に使う現場」を1〜2件確定させ、半年前から書き起こしを始めるのが定石です。
試験日程と申込先
試験は一般財団法人建設業振興基金が国土交通大臣指定機関として実施しています。例年、第一次検定は7月上旬、第二次検定は10月中旬の試験日が多く、申込受付は2月〜3月の約1か月間に限定されます。受験料は第一次・第二次それぞれ13,200円(2026年時点)。
合格率の推移
1級電気工事施工管理技士の合格率は、第一次検定で35〜50%前後、第二次検定で50〜70%前後で長く推移してきました。直近の傾向は以下のとおりです。
| 年度 | 一次検定合格率 | 二次検定合格率 | 受験者数の傾向 |
|---|---|---|---|
| 令和3年度 | 約49% | 約57% | 横ばい |
| 令和4年度 | 約38% | 約56% | 微減 |
| 令和5年度 | 約41% | 約53% | 横ばい |
| 令和6年度 | 約37% | 約50% | 制度改正で受験者47%増 |
| 令和7年度 | 約42% | 約70% | 二次合格率が大幅改善 |
令和6年度は新受験資格による初年度で、19歳から受験可能になった一次検定の受験者が、前年度の16,265人から23,927人へと約47%増加しました。一次合格率は前年からやや下がったものの、二次は経験ある層が受験するため大きな崩れは見られませんでした。令和7年度は二次の合格率が約70%まで上昇しており、これは新形式の経験記述に対する受験者の準備が進んだ結果と分析されています。
難易度の体感としては、電験三種(理論色が濃い)より基本的に取りやすく、第二種電気工事士より明確に難しい中間レンジです。ただし、第二次検定の経験記述は採点者が「現場経験の質」を見ているため、過去問演習だけでは突破できない別系統の難しさがあります。
効率的な勉強法と学習時間
必要な学習時間の目安
合格者の体験談を集計すると、第一次検定で100〜250時間、第二次検定で100〜300時間、トータル200〜550時間程度が目安です。1日1時間ペースなら6か月〜1年半。実務経験が豊富で電気理論・法規の基礎ができている人ほど短時間で済み、文系・他業種から建設業界に入った人ほど長くかかる傾向があります。
第一次検定の攻略順序
過去問を5年分以上、3周することを最初の指標にします。1周目で「何が問われているか」を把握し、2周目で誤答を解説と紐付け、3周目で時間を計って実戦演習に入る流れが王道です。電気工学の理論問題は配点に対して学習負荷が大きいため、配点の高い「施工管理法(応用能力)」「電気設備」「法規」を優先するのが時間効率の面で正解です。
第二次検定の攻略順序
令和6年度改正以降、経験記述の比重が極めて重くなりました。準備の手順は次の通りです。
第二次検定 経験記述の準備手順
- 使う現場を1〜2件確定(工期・規模・職位・自分の役割を明文化)
- 工程管理・安全管理について「問題点」「理由」「対策」を各3パターン書き出す
- 過去年度の合格答案例を3例以上読み、文字数感(300〜500字/設問)に慣れる
- 添削サービスや先輩レビューで「曖昧表現」「数値の根拠不足」を潰す
- 試験3週間前から、A4手書きで時間内に書き切る訓練を週2回
独学か通信講座か
独学が向くのは、過去問演習を自走できる人、現場の先輩から経験記述の添削を受けられる人です。一方、通信講座や予備校が効くのは、第二次検定の経験記述に対する第三者添削が手に入る点と、「捨ててよい論点」「捨ててはいけない論点」の優先順位を最初に提示してくれる点です。独学で挑む場合、最低でも経験記述だけは添削サービスを単発購入することを強く推奨します。
資格取得後の年収・キャリアパス
年収レンジの目安
厚生労働省「賃金構造基本統計調査」では、施工管理技術者の平均賃金は産業計の平均をやや上回る水準にあります。1級電気工事施工管理技士に限定した転職市場の求人実勢値を整理すると、おおむね次のレンジに収まります。
| レイヤー | 年収レンジ | 典型ポジション |
|---|---|---|
| 20代後半(取得直後) | 400〜550万円 | 現場担当、主任技術者 |
| 30代前半 | 500〜700万円 | 監理技術者、所長補佐 |
| 30代後半〜40代 | 600〜850万円 | 所長、工事部課長 |
| 40代以降(管理職) | 750〜1,000万円超 | 支店長、技術部長、役員 |
| 独立・専任技術者派遣 | 700〜1,200万円 | 個人事業、技術者派遣 |
同じ1級でも、所属企業の業態で年収は大きく動きます。スーパーゼネコン系の電気部門、サブコン大手(関電工・きんでん・トーエネック・九電工など)、独立系設備会社、データセンター・半導体工場特化のサブコンでは、案件単価が違うため給与テーブルが変わります。半導体・データセンター・再生エネルギーの大型案件を持つ会社では、30代でも800万円超えの提示が珍しくありません。
キャリアパスの典型パターン
1級取得後のキャリアは、大きく4方向に分かれます。
1級電気工事施工管理技士の主なキャリア
- 現場一筋ルート:所長→支店工事課長→技術部長。スーパーサブコンなら年収1,000万円超が到達点
- 本社マネジメントルート:見積・原価管理・技術部→支店長・役員候補
- 専門特化ルート:データセンター、半導体、再エネ、洋上風力など高単価分野
- 独立・専任技術者ルート:個人で建設業許可取得、または専任技術者派遣で1,000万円超
近年とくに評価が上がっているのが、データセンター・半導体工場・再生可能エネルギーの3分野に明るい技術者です。発注側の需要が政策的に拡大しており、対応できる会社の数が追いついていないため、専門軸を持つ1級技士の取り合いが続いています。施工管理職の年代別キャリア論は施工管理職のキャリアパス完全ガイド|20代・30代・40代の選択肢と年収で詳しく整理しています。
2級との違いと取得順序
1級と2級は試験名が似ているため混同されがちですが、現場で扱える工事規模・社内のポジション・年収レンジまで明確に違います。
| 項目 | 1級電気工事施工管理技士 | 2級電気工事施工管理技士 |
|---|---|---|
| 監理技術者 | 可(電気工事) | 不可 |
| 主任技術者 | 可 | 可 |
| 特定建設業の専任技術者 | 可 | 不可 |
| 一般建設業の専任技術者 | 可 | 可 |
| 経営事項審査の加点 | 5点(監理技術者証+講習で6点) | 2点 |
| 資格手当の相場 | 月10,000円前後 | 月5,000円前後 |
取得順序のおすすめ
実務経験ゼロからのスタートなら、2級電気工事施工管理技士の二次検定合格→実務経験を5年積みながら1級の一次検定→経験5年到達後に1級二次検定、という流れが王道です。2024年改正で1級一次検定が19歳から受験可能になったため、2級二次の合格を待たずに1級一次から先に通すルートも増えています。
1級は「電気工事」専門資格ですが、建築・土木など複数領域を見たいなら、関連資格との重ね取りが効きます。1級施工管理技士全体の制度設計や、種目ごとの難易度比較は1級施工管理技士 完全攻略|建築/土木/電気/管/造園/建機の試験対策と合格率を、土木との比較は1級土木施工管理技士 完全攻略|公共工事・インフラ向け資格と年収アップの効果を参照してください。
会社選びチェックポイント
同じ1級電気工事施工管理技士でも、所属する会社の業態・規模・案件構成で年収もキャリアの伸び方も大きく変わります。資格取得直後に会社選びを誤ると、年収の天井が想定より低くなる典型例が多発します。次の観点を必ず押さえてください。
会社選びの5チェックポイント
- 案件単価:データセンター・半導体・再エネなど高単価分野の比率
- 1級保有者の比率:技術者厚みが薄い会社ほど早期に重要案件を任される
- 監理技術者手当の有無:月3〜10万円の差は5年で180〜600万円差
- 原価管理の権限:所長として裁量があるか、本社決裁がどこまで降りるか
- キャリアの上が詰まっていないか:所長から先のポストの空き状況
避けたい会社の特徴
- 1級保有者を「資格手当だけ払って囲い込み」している(昇進が止まりやすい)
- 受注案件の8割以上が低単価リニューアル工事(学習機会が限定される)
- 同年代の社員がほぼいない(タテヨコの相談相手が不在で経験記述の質が伸びない)
- 建設業許可が一般建設業のみ(特定建設業の経験を積めず転職市場価値が伸び悩む)
転職を検討する段階では、求人票の年収レンジだけでなく「監理技術者として配置される現場の単価帯」と「所長になるまでの年数中央値」を必ず質問しましょう。この2点が答えられない会社は、技術者キャリアの設計が組織として弱い可能性があります。
よくある質問
Q1. 1級電気工事施工管理技士の合格率はどれくらいですか?
一次検定で35〜50%前後、二次検定で50〜70%前後で推移しています。直近の令和7年度は一次が約42%、二次が約70%でした。令和6年度の制度改正により受験者数が大幅増加していますが、二次の合格率は経験記述への準備が進んだ層によって近年むしろ改善傾向にあります。
Q2. 実務経験ゼロでも受験できますか?
第一次検定は2024年度から、年度末時点で19歳以上であれば学歴・実務経験ゼロでも受験できます。合格すると「1級電気工事施工管理技士補」になり、監理技術者の補佐として現場に入りながら経験を積めます。第二次検定は実務経験5年などの要件があるため、就職前に技士補だけ取って入社する流れが増えています。
Q3. 2級を持っていなくても1級を受けられますか?
受けられます。新受験資格では2級合格は必須条件ではありません。19歳以上であれば1級一次検定からダイレクトに挑戦可能で、2級を飛ばす受験者が増えています。ただし1級二次検定は実務経験5年以上が必要なため、若年層は「1級一次→現場経験5年→1級二次」のルートで進むことになります。
Q4. 勉強時間はどれくらい必要ですか?
第一次検定で100〜250時間、第二次検定で100〜300時間が目安です。1日1時間ペースなら6か月〜1年半。実務経験が豊富な人ほど短時間で合格しやすい傾向があります。第二次検定は経験記述の比重が大きいため、現場担当の経験を整理するために単独で2〜3か月を確保するのが現実的です。
Q5. 1級取得で年収はどれだけ上がりますか?
資格手当だけで月1万円前後、年12万円程度の上乗せが一般的です。これに加えて監理技術者として配置されると、月3〜10万円の現場手当が付くことが多く、年収ベースで50〜120万円の押し上げ効果があります。さらに2級時代には任せられなかった大型案件の所長を任され、評価・賞与が上がる二次効果のほうが大きいのが実態です。
Q6. どの業態に転職すると年収が高くなりやすいですか?
2026年時点で年収レンジが厚いのは、データセンター案件を主軸とするサブコン、半導体工場の電気設備工事を扱う会社、洋上風力・大規模太陽光などの再生可能エネルギー特化の会社です。スーパーサブコン(関電工・きんでん・トーエネック・九電工など)は新卒からの安定したテーブルがあり、専門特化サブコンは中途で年収レンジが伸びやすい傾向があります。
Q7. 1級を取った後、次に取るとキャリアが伸びる資格は?
電気主任技術者(電験三種)、第一種電気工事士、消防設備士甲種、技術士(電気電子部門)などの上位資格が代表例です。とくに電験三種は、自家用電気工作物の保安監督ができるため、データセンターや工場の引き合いに直結します。1級電気工事施工管理技士+電験三種を両方持つ人材は転職市場で年収+100〜200万円のプレミアムが付く水準です。
参考文献・出典
- 一般財団法人建設業振興基金 試験研修本部「1級電気工事施工管理技術検定 受験案内」
- 国土交通省「技術検定制度の改正について(令和6年4月施行)」
- 国土交通省「建設業法及び建設業法施行令の改正(令和6年12月)」
- 厚生労働省「令和6年 賃金構造基本統計調査」(建設業・施工管理技術者の平均賃金)
- 国土交通省「経営事項審査における技術職員加点項目」
- 国税庁「令和5年分 民間給与実態統計調査」(給与所得者全体の平均年収)
※年収レンジは公的統計・転職市場での実勢値をもとに編集部が整理した目安です。実値は経験・専門領域・所属企業の業績で大きく変動します。
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