監査法人を辞めたい人のキャリア選択|FAS/コンサル/CFO候補

カテゴリ:会計士・税理士
更新日:2026年6月19日
読了目安:約20分

監査法人を辞めたいと考える公認会計士は珍しくありません。日本公認会計士協会の会員数調や複数の業界調査によれば、BIG4監査法人では入所5年で約4割、10年で約7割が離職するとされ、毎年1,500人前後の合格者を吸収しながらも同等規模の退職者が流出する「高回転市場」となっています。本記事では、監査法人を辞めたい人が選び得る5つの代表的キャリア(FAS/コンサル/CFO候補/独立/他法人)について、年収レンジ・必要スキル・タイミング別の戦略までを2026年最新データで体系的に解説します。

この記事のポイント
監査法人を辞めたい人の主な転職先はFAS/コンサル/CFO候補/独立/他法人の5系統。FAS・M&Aアドバイザリーは同役職比+100〜300万円、独立系M&A仲介は平均1,000万〜2,200万円超、IPO準備CFOは現金800万〜1,500万円+ストックオプションが現実的なレンジ。退職タイミングは「主査経験+修了考査合格」の30歳前後が最も評価されやすい。

監査法人を辞めたいと感じる人はどれくらい?

日本公認会計士協会の会員数調(2024年12月時点)によれば、公認会計士・準会員の合計は43,731人。一方で公認会計士・監査審査会の発表では、令和6年合格者1,603名、令和7年合格者1,636名と毎年1,500人前後の新規供給が続きます。同時に業界キャリアエージェント各社の集計によれば、BIG4監査法人の在籍者は入所5年で約4割、10年で約7割が離職するとされており、毎年同規模の退職者が市場に流れる「高回転構造」が常態化しています。

2024年度(令和6年度)修了考査の合格者1,388名がすべて正会員登録した場合、公認会計士(正会員)数は2025年2月末時点の36,686名から38,074名へと約3.8%増加すると試算されています。会員総数は年1〜2%で増加する一方、BIG4の定期採用枠は限定的で、若手の供給超過が「外に出た会計士」の選択肢を毎年厚くしている構造です。

BIG4監査法人の離職率データ

BIG4(あずさ/EY新日本/PwC Japan/トーマツ)の正確な離職率は各法人とも非開示ですが、有限責任組織として公表される「業務及び財産の状況に関する説明書類」と業界エージェントの集計を組み合わせると、入所3年で約3割、5年で約4割、10年で約7割が法人を離れているとされます。同期100名のうち、シニアマネージャーまで残るのは20〜30名程度、パートナー昇格まで到達するのは1桁台というのが業界の感覚値です。

離職のピークは「修了考査前後(入所3〜4年目)」「マネージャー昇格前後(7〜8年目)」「シニアマネージャー以降(13年目〜)」の3回。とくに修了考査合格直後は、資格者として市場価値が一気に上がるため、FAS/コンサル/事業会社いずれからもオファーが取りやすいタイミングです。

辞めたい主な6つの理由

各キャリアエージェントの調査で挙がる「監査法人を辞めたい理由」を整理すると、(1)繁忙期の長時間残業と心身の疲弊、(2)監査業務の定型化・成長実感の頭打ち、(3)昇格スピードの遅さとパートナー上限の見えづらさ、(4)クライアントとの調整ストレスや人間関係、(5)年収カーブの伸び悩み(とくに準大手・中堅)、(6)FAS/コンサル/事業会社CFOといった次のキャリアへの志向、の6つに収れんします。

残業時間は繁忙期(1〜2月・4〜5月)で月60〜120時間、シニア以上のチームによっては120時間超もあり、「ワークライフバランスは取れるが、繁忙期は完全に犠牲になる」という構造的な負担が、辞めたい理由の上位に挙がる最大要因です。

監査法人を辞める前に整理すべき3つのチェックポイントとは?

監査法人を辞めるかどうかは、感情ではなく「次のキャリアでの再現性」で判断するのが鉄則です。具体的には、(1)主査経験の有無、(2)修了考査の合否、(3)担当業界・チャージ単価の3点を棚卸ししたうえで、転職市場での「自分の値段」を確認することから始めます。

主査経験・修了考査・担当業界の棚卸し

主査経験(インチャージ/J3〜J4以降)は、FAS/コンサル/事業会社いずれの転職でも「マネジメント耐性」の指標として最重視されます。シニア1〜2年目で主査経験が複数案件あるか、レビュー・スケジューリング・後輩指導の経験が言語化できるかが、最初のチェックポイントです。

修了考査に合格していれば「公認会計士」として登録できるため、CFO候補・独立志向のキャリアにも進路が開けます。合格前であっても、FAS/コンサル/他監査法人への移籍は十分可能ですが、CFO候補ポジションの一部や独立税理士法人立ち上げは資格取得後の方が選択肢が広がります。担当業界は、金融・製造・IT・小売・PEファンドなど自分が得意とする領域を1〜2軸で言語化できるかが重要です。詳細なキャリアパス整理は「経理・会計のキャリアパス完全ガイド」も参照してください。

退職のベストタイミングはいつ?

多くのキャリアエージェントの推奨は「実務経験年数3〜5年」かつ「30代まで」。修了考査合格直後(入所3〜4年目)か、マネージャー昇格直前(入所6〜7年目)のいずれかが、市場価値が最大化しやすいタイミングです。30代後半以降になると、未経験職種への転職難易度は急上昇しますが、マネージャー以降の経験があれば事業会社CFOや独立系FASでは引く手あまたが続きます。

転職活動は「在職中に開始」が原則です。退職後の活動は無職期間が長引きやすく、面接でも「逃げの転職」と見られる可能性があります。市場価値の打診から内定までは平均3〜6か月を見込み、繁忙期を避けて秋〜冬に動き始めるのが定石です。

キャリア選択①FAS/M&Aアドバイザリーの年収と業務内容は?

FAS(Financial Advisory Services)は、M&Aの財務デューデリジェンス(DD)、バリュエーション、PMI、フォレンジック、再生支援などを扱う領域で、公認会計士の代表的な転職先です。監査で培った財務分析力をそのまま活かせるため、未経験からの参入難易度が比較的低く、年収レンジも監査法人より一段上がるのが特徴です。

BIG4 FASの年収レンジ

BIG4 FAS(KPMG FAS/DTFA/PwCアドバイザリー/EY SaT)のアナリスト〜アソシエイトは約550万〜800万円、シニアアソシエイトで800万〜1,300万円、マネージャーは1,000万〜2,000万円のレンジが中心です。シニアマネージャー1,400万〜2,200万円、ディレクター・パートナーは2,000万〜3,000万円超が一般的な目安となります。同じ役職で比較しても、監査法人より100〜300万円高いケースが多く、シニア層の上振れが大きいのがFASの特徴です。

業界推計ではKPMG FASとPwCアドバイザリーの平均年収が高めで、業界調査ベースでは平均1,000万〜1,500万円のレンジが言及されます。会計士資格保有者比率の高さ、ファイナンス専門人材の市場価値の高さがそのまま年収に反映される構造です。具体的なレンジは「公認会計士の年収ランキング2026」も参照してください。

独立系FAS/M&A仲介の年収

独立系FAS/M&A仲介は、有価証券報告書ベースで平均年収が判明する企業も多く、業界トップクラスの水準を示します。M&Aキャピタルパートナーズ(6080)は平均約2,266万円(2025年9月期、平均年齢32.4歳)、ストライク(6196)は約1,608万円(2024年9月期)、日本M&Aセンター(2127)は約1,182〜1,271万円、フーリハン・ローキー(旧GCA)は約1,245万円、フロンティア・マネジメント(7038)は約1,171〜1,268万円、山田コンサルティンググループ(4792)は約948万円(2025年3月期)が公表値です。

これらの企業は、M&Aフィーや成功報酬の還元が直接給与・賞与に反映されるため、若手でも1,000万円を超えるケースが珍しくありません。一方、ディール残業や移動の多さ、入れ替わりの早さは前提として理解しておく必要があります。BIG4 FAS出身→独立系FAS/M&A仲介への転職は、年収カーブを一段上に乗せ替える代表的なルートです。

主要FAS/M&A仲介 平均年収(有報) 特徴
M&Aキャピタルパートナーズ 約2,266万円 平均年齢32.4歳・成功報酬型
ストライク 約1,608万円 中堅オーナー企業案件中心
フーリハン・ローキー(旧GCA) 約1,245万円 クロスボーダー・大型案件
日本M&Aセンター 約1,182〜1,271万円 業界最大手・案件数最多
フロンティア・マネジメント 約1,171〜1,268万円 FAS+再生コンサル併設
山田コンサルティンググループ 約948万円 事業承継・PMIに強み

※ 各社有価証券報告書(直近期)に基づく。役職・成績により上下に大きく振れます。

FASに向いている人・必要スキル

FAS転職で評価されるのは、(1)主査経験を含む監査の即戦力性、(2)Excelによる財務モデリング、(3)英語(クロスボーダー案件のあるファーム)、(4)クライアントワーク耐性、の4点です。とくに財務モデリング・バリュエーション・DDの基礎は、業務に入る前に独学で押さえておくと立ち上がりが早くなります。FASは「監査の延長線上」ではなく「アドバイザリー」であり、クライアントの意思決定を直接動かす提案力が求められる点に注意が必要です。

キャリア選択②コンサルティングファームへの転職はどう違う?

コンサルティングファームは、戦略系(マッキンゼー/BCG/ベイン)、総合系(アクセンチュア/BIG4コンサル/アビーム)、FAS系(前述)、IT系、業界特化系の5系統に大別されます。公認会計士はとくに総合系のリスク・財務領域、戦略系のPE関連プロジェクト、BIG4コンサルのファイナンストランスフォーメーション領域で需要が高くなります。

総合系コンサル(BIG4/アクセンチュア)の年収

BIG4コンサル(PwCコンサルティング/デロイト トーマツ コンサルティング/KPMGコンサルティング/EYストラテジー・アンド・コンサルティング)は、コンサルタント(中途3〜5年目)で800万〜1,200万円、マネージャー1,200万〜1,800万円、シニアマネージャー1,600万〜2,200万円、ディレクター・パートナーで2,200万〜3,500万円超が業界推計の目安です。アクセンチュアも同水準で、シニアマネージャー以上はストックを含む長期インセンティブが乗ります。

監査法人マネージャー→BIG4コンサル マネージャー転職では、現職比で200万〜400万円アップするケースが多く、ファイナンストランスフォーメーション(経理DX/IFRS導入/ERP刷新)案件は会計士のキャリア資本がそのまま評価されます。

戦略コンサル・特化コンサルの年収

戦略系(マッキンゼー/BCG/ベイン)は、アソシエイト(中途3〜5年目)で1,000万〜1,400万円、コンサルタント1,500万〜2,000万円、マネージャー2,000万〜3,000万円、プリンシパル・パートナー3,000万〜5,000万円超が一般的なレンジです。会計士からの転職は珍しくありませんが、面接ではケース面接対策が必須で、入社後はファイナンス領域だけでなく全業界・全機能の課題解決を求められます。

業界特化系(ITコンサル/医療コンサル/不動産コンサルなど)は700万〜1,500万円が中心で、専門領域に深く入っていきたい場合に選ばれます。FASでM&Aを軸にしたい人は前章のFAS、企業全体の経営課題に踏み込みたい人はコンサル、というのが大まかな住み分けです。

監査法人→コンサルが向いている人

  • クライアントの意思決定そのものを動かしたい(DDレポート止まりではなく実行支援まで)
  • 経営層との会話・提案・プレゼンの場数を踏みたい
  • 会計領域に加えて、ERP/IFRS/PE/DXなど周辺領域へ横展開したい
  • 30代前半までに年収1,500万円台に乗せたい

キャリア選択③事業会社CFO候補・経営企画ポジションの実態は?

事業会社のCFO候補・経営企画ポジションは、会計士が監査法人を辞めて最終的に行き着く「もう一つの主力ルート」です。IPO準備会社/上場会社/メガベンチャー/グローバル企業と段階別に処遇が大きく異なります。

IPO準備会社CFOとストックオプション

IPO準備会社のCFOは現金年収800万〜1,500万円に、ストックオプション(SO)を組み合わせる設計が一般的です。MoneyForward の集計ではグロース市場IPO企業の新株予約権付与比率の中央値が9.4%(2022年)、2023年1〜3月は平均6.33%とされ、CFO個人付与は全体枠の1〜3%が相場感です。時価総額100億円規模での上場であれば、CFOの保有比率1%でキャピタルゲイン約1億円規模が現実的な試算になります。

JAFCO の調査ではグロース市場CFO就任時の平均年齢は約39歳とされ、30代後半〜40代前半でCFOに就任するケースが「会計士・FAS経験者の典型キャリア」です。監査法人マネージャー→FAS→IPO準備CFO、という2ステップ移籍が代表的な勝ちパターンとなります。

上場会社・大手企業の経理財務・経営企画

上場会社CFO(グロース市場)は1,500万〜3,000万円、プライム市場・グローバル企業のCFOは2,000万〜3,000万円超が中心レンジ。経営企画スタッフは500万〜700万円、マネージャー800万〜1,100万円、経営企画部長は1,200万〜1,800万円が目安です。MS-Japanの集計ではマネジメント層平均年収は管理部門全体で934万円とされ、専門職の中でも高水準に位置します。

CFO候補ポジションへの登用ルートは、(1)IPO準備会社のCFO直下で経営企画を担う、(2)上場会社の経営企画→子会社CFO→本社CFOと段階的に上がる、の2パターンが定石です。エージェントの専門性が年収・条件に大きく影響するため、専門特化型エージェントの活用が前提となります。詳細は「会計士の転職エージェントおすすめ|ツインプロの評判」「経理・管理部門の転職エージェントおすすめ|ジャスネットキャリアの評判」を参照してください。

キャリア選択④独立開業・税理士法人立ち上げの現実は?

独立開業は、税理士登録(公認会計士は税理士登録可能)を行ったうえで個人事務所・税理士法人を立ち上げるルートです。軌道に乗れば年収2,000万〜5,000万円も現実的ですが、初期2〜3年は500万〜800万円に下振れすることが多く、現金準備と顧客獲得の設計が成功の鍵となります。

開業会計士・税理士の年収

独立直後は顧問先ゼロからのスタートで、初年度の売上は300万〜800万円、経費を差し引いた手取りは300万〜500万円というケースも珍しくありません。3〜5年で顧問先30社・年間売上3,000万円規模に到達すれば、手取り1,500万〜2,000万円のレンジに入り、人を雇って法人化に進めるのが標準的な成長パスです。

専門特化(IPO支援/M&A税務/国際税務/医療法人/資産税)に成功した独立会計士・税理士法人は、顧問先1社あたり月額10万〜50万円のフィーを取れるため、規模を追わずに高単価モデルで年収3,000万〜5,000万円に到達することもあります。BIG4 FAS出身のM&A税務独立、税理士法人パートナー独立などが代表例です。

立ち上げ初期のリスク

独立後の最大リスクは「顧客獲得の不確実性」と「初期キャッシュフロー」です。顧問先ゼロの状態で家賃・人件費・システム費が固定で出ていくため、最低でも生活費12〜18か月分の現金準備が必要となります。また、独立後の社会保険・年金は全額自己負担となり、給与所得時代より手取りが下がる感覚を持つことも多くなります。

顧問先候補のリスト化、紹介経路の確保(顧問税理士交代の声がかかる弁護士・社労士・銀行員ネットワーク)、自分の専門性が刺さるターゲット業界の選定は、独立前1〜2年で準備しておきたい要素です。

キャリア選択⑤他監査法人・準大手への移籍は意味がある?

「監査法人を辞めたいが、業界自体は嫌いではない」という人にとって、他のBIG4/準大手/中堅監査法人への移籍は現実的な選択肢です。同業他社への移籍は、(1)業務の専門性を維持しつつ環境を変えられる、(2)残業や人間関係のリセットができる、(3)転職市場での評価の最大化(次の転職への布石)、の3点でメリットがあります。

BIG4間の移籍と準大手への移籍

BIG4間の移籍(例:あずさ→トーマツ)は、同役職での横スライドが基本で、年収は数十万円〜100万円程度の差にとどまります。法人風土・担当業界・チャージ単価の3点で違いが出るため、「いまの法人で得られない経験」を明確にしたうえで動くのが定石です。

準大手・中堅監査法人(仰星/太陽/三優/東陽/PwC京都/優成など)への移籍は、BIG4より責任範囲が早く広がりやすい点と、IPO支援・国際税務・PE案件などの専門領域に若手から関与できる点がメリットです。準大手スタッフは約480万〜700万円、シニアで約700万〜900万円、マネージャーで約850万〜1,200万円が目安で、BIG4比で同役職100〜200万円程度下回るのが一般的です。一方で大規模監査の経験量はBIG4に劣るため、長期的に上場メガクライアントを担当したい場合はBIG4が第一選択肢になります。

転職先カテゴリ 年収レンジの目安 主な業務 向いている人
BIG4 FAS シニア800万〜1,300万円/マネージャー1,000万〜2,000万円 M&A DD・バリュエーション・PMI 監査経験を活かしつつ年収UP
独立系FAS/M&A仲介 平均1,000万〜2,200万円超 M&A仲介・成功報酬型ディール 成果主義・若手でも1,000万円超
BIG4/総合系コンサル マネージャー1,200万〜1,800万円 経理DX/IFRS/PMI/FaaS 実行支援まで踏み込みたい
戦略コンサル マネージャー2,000万〜3,000万円 経営戦略・PE支援 全業界横断で課題解決したい
IPO準備CFO 現金800万〜1,500万円+SO 資金調達・IPO実務・管理体制構築 SOで一発を狙いたい
上場会社CFO・経営企画 1,500万〜3,000万円超 IR・経営計画・連結決算 長期で安定的に高年収
独立・税理士法人 初期500万〜800万円/成功時2,000万〜5,000万円 顧問税務・M&A税務・IPO支援 自分で事業を作りたい
他監査法人・準大手 スタッフ480万〜700万円/マネージャー850万〜1,200万円 監査・IPO支援 業界は維持し環境だけ変えたい

監査法人退職タイミング別の戦略はどう違う?

監査法人を辞めるタイミングは、(1)スタッフ2〜3年目、(2)修了考査前後、(3)マネージャー昇格前後、(4)シニアマネージャー以降、の4区分で戦略が大きく異なります。それぞれに「狙えるキャリア」と「年収レンジ」が違うため、自分の現在地に合わせて設計する必要があります。

スタッフ2〜3年目で辞める場合

スタッフ2〜3年目(J1〜J2)は、主査経験がまだ薄いため転職難易度はやや高めです。FAS・コンサルでの評価は限定的で、まずは他監査法人への移籍か、事業会社の経理・経営企画スタッフ(500万〜700万円)が現実的な選択肢になります。この段階で辞める場合は、「いまの法人で残り2年シニアまで頑張る」と「業界転換して若さの価値を活かす」のどちらが長期最適かを比較するのが先決です。

修了考査前後(入所3〜5年目)

修了考査合格直後は、市場価値が一気に上がる「ゴールデンタイム」です。BIG4 FAS/コンサル/IPO準備CFOいずれも現実的な選択肢で、年収レンジは600万〜1,000万円。とくにシニア1〜2年目の主査経験がある状態でFAS/コンサルに移ると、現職比200万〜400万円アップが期待できます。修了考査前に辞めるか、合格後に辞めるかは、CFO候補や独立志向であれば「合格後」を強く推奨します。

マネージャー昇格前後(入所6〜10年目)

マネージャー昇格前後は、年収レンジが900万〜1,500万円となり、FAS/コンサルではシニアマネージャー相当の処遇(1,500万円前後)から再スタートできる可能性もあります。IPO準備CFO・上場会社経理財務マネージャーへの転職も現実的な選択肢となり、長期的な年収カーブを「次の10年」で大きく動かせる節目です。

シニアマネージャー以降(入所10年目〜)

シニアマネージャー以降は、(1)パートナー昇格を目指して残る、(2)独立する、(3)CFO転身、(4)大手事業会社管理部門への移籍、の4択になります。30代後半〜40代前半は会計士キャリアの「価値が最も評価されやすい数年」であり、転職タイミングを逃さない情報収集が長期年収を左右します。シニアマネージャーまで上がった後の独立は、税理士法人・コンサル法人化で年収2,000万〜5,000万円超が視野に入ります。

監査法人を辞めて後悔しないための3つの注意点とは?

転職前に必ず確認したいリスク

  • FAS・M&A・コンサルは案件稼働で生活が大きく変動。残業時間・連続出張は監査法人より一段重く、繁忙期だけでなく通年で高負荷というケースもあります。家庭やライフイベントとの両立を前提に設計することが重要です。
  • CFO候補はSO付与=高年収ではない。IPO到達確率・上場時時価総額・希薄化リスクの3点で、SOの実質価値は数倍〜ゼロに分かれます。優先株/発行枠/行使条件まで読む必要があります。また、CFOは法務・労務・人事・IRまで広く担当するため、会計だけでは務まりません。
  • 独立は初期2〜3年の年収ダウンを許容できる現金準備が必要。顧客獲得が軌道に乗るまで500万〜800万円のレンジに下振れすることが多く、生活設計と運転資金の確保が前提です。配偶者の収入があるか、生活防衛資金が1.5年分以上あるかが分岐点になります。

監査法人を辞めて後悔する典型パターンは、(1)感情的に辞めて市場価値を整理しないまま転職、(2)年収だけで決めて業務適性をチェックしない、(3)転職エージェントを使わず公開求人だけで活動する、の3つです。とくにハイクラス求人ほど非公開で動くため、専門特化型エージェントを2〜3社活用するのが定石となります。

2026年の監査法人キャリア転職市場はどうなっている?

MS-Japan「会計士の転職市場レポート2024」(2023年10月〜2024年9月、MS Agentデータ)によれば、公認会計士の平均募集年収は884万円。2024年は「業界を問わずチャレンジしたい」会計士の割合が前年比+10%増となり、業界横断的な転職志向が強まっています。年代別では転職活動・転職決定の双方で30代がボリュームゾーンで、20代後半〜30代前半が転職決定時の平均年収を押し上げています。

業界全体では、BIG4の入社5年で約4割、10年で約7割が離職するという業界推計が継続的に言及されており、転職市場は売り手優位の状態が続いています。ヒュープロの公開求人数は2025年時点で12,000件超とされ、会計士向け案件は監査法人内昇格・FAS・コンサル・CFO候補・独立支援まで広く厚みを保っています。

2026年に注目すべき3つの市場トレンド

第一に、BIG4監査法人の初任給ベースアップが続いており、KPMGあずさは2025年3月に新卒月給を35万円(都市圏手当込)へ引き上げ、3年連続のベースアップを公表しています。EY新日本・PwC Japan・トーマツも追随しており、「辞めるか残るか」の判断には現職の処遇改善トレンドも織り込む必要があります。

第二に、グロース市場のIPO企業数の減少と非上場M&A市場の活性化により、IPO準備CFOよりもPE投資先・大型MBO案件のCFO候補ポジションが増加傾向です。第三に、AI・経理DX関連案件の拡大に伴い、BIG4コンサル・総合系コンサルのファイナンストランスフォーメーション領域が急成長しており、会計士のキャリア資本が直接活きる市場が拡大しています。

監査法人を辞めたい人のよくある質問

監査法人を辞めたいと感じたとき、まず何をすべき?

感情で動かず、主査経験・修了考査・担当業界の3点を棚卸ししたうえで、専門特化型エージェント2〜3社に登録して市場価値を打診するのが先決です。現職の繁忙期を避けて秋〜冬に動き始め、内定までは3〜6か月を見込むのが目安。在職中の活動を原則とし、退職後に動き始めると面接で不利になりやすい点に注意が必要です。

監査法人の離職率はどれくらい?

業界推計では、BIG4監査法人で入所5年で約4割、10年で約7割が離職するとされます。離職のピークは「修了考査前後」「マネージャー昇格前後」「シニアマネージャー以降」の3回で、毎年1,500人前後の新規合格者を吸収しながら、同等規模の退職者が流出する高回転構造が常態化しています。

監査法人を辞める一番おすすめのタイミングは?

多くのエージェントが推奨するのは「実務経験3〜5年」かつ「30代まで」、とくに修了考査合格直後(入所3〜4年目)です。主査経験が複数あり、修了考査に合格していれば、FAS/コンサル/IPO準備CFOいずれからも声がかかる状態が作れます。

監査法人からFASに転職すると年収はどれくらい上がる?

BIG4監査法人マネージャー→BIG4 FAS マネージャーの場合、現職比200万〜400万円アップが一般的な目安です。独立系FAS/M&A仲介(M&Aキャピタルパートナーズ・ストライク・フーリハン・ローキー等)に移る場合は、有報ベースで平均1,000万〜2,200万円超とさらに上振れします。役職・案件規模・成功報酬で実額は大きく動きます。

監査法人を辞めて事業会社に転職すると年収は下がる?

事業会社の経理マネージャー(一般大手)に転職すると、監査法人マネージャー時代より年収が100万〜300万円下がるケースが多くあります。一方、IPO準備CFO(現金800万〜1,500万円+SO)や上場会社CFO(1,500万〜3,000万円)への転身であれば、年収は同等以上に保てます。事業会社転職は「現金年収」と「ストックオプション・ライフバランス」のトータルで比較するのが重要です。

修了考査合格前に監査法人を辞めても大丈夫?

FAS・他監査法人・コンサルへの転職は十分可能ですが、CFO候補や独立志向の場合は「修了考査合格後」のほうが選択肢が広がります。修了考査の合格率は2024年度(令和6年度)で77.1%と過去最高水準のため、合格してから動くコストは限定的で、登録会計士の肩書きを取り切ってから動くメリットが大きいケースが多くなります。

監査法人を辞めて独立する場合、何年目がベスト?

マネージャー昇格後(おおむね入所10年目前後)か、FAS/コンサル経験を1社挟んだ後(13〜15年目)が独立の代表的なタイミングです。初年度は500万〜800万円に下振れすることが多く、生活費12〜18か月分の現金準備、顧問先候補のリスト化、紹介経路の確保が独立成功の鍵となります。長期では税理士法人・コンサル法人化で年収2,000万〜5,000万円超も視野に入ります。

まとめ|監査法人を辞めたい人の2026年キャリア選択

監査法人を辞めたい公認会計士の代表的なキャリア選択は、(1)FAS/M&Aアドバイザリー、(2)コンサルティングファーム、(3)事業会社CFO候補・経営企画、(4)独立開業・税理士法人、(5)他監査法人・準大手への移籍の5系統。FASは同役職比+100〜300万円、独立系M&A仲介は平均1,000万〜2,200万円超、IPO準備CFOは現金800万〜1,500万円+ストックオプション、独立は成功時年収2,000万〜5,000万円超が現実的なレンジとなります。

退職タイミングは「主査経験+修了考査合格」の30歳前後がもっとも評価されやすく、エージェントの専門性が年収・条件を大きく左右します。辞めるか残るかの判断には、(1)現職の処遇改善トレンド、(2)自分の主査経験・担当業界、(3)次のキャリアでの再現性、(4)生活防衛資金、の4点を必ず織り込むのが鉄則です。

関連記事として、「公認会計士の年収ランキング2026」「経理・会計のキャリアパス完全ガイド」「会計士の転職エージェントおすすめ|ツインプロの評判」「経理・管理部門の転職エージェントおすすめ|ジャスネットキャリアの評判」も合わせて参考にしてください。

【出典・参照】
・日本公認会計士協会「会員数調 2024年12月版」
・公認会計士・監査審査会「公認会計士試験 合格発表(令和6年・令和7年)」
・日本公認会計士協会「2024年度(令和6年度)修了考査の合格発表について」
・あずさ監査法人「業務及び財産の状況に関する説明書類 第41期」/KPMGあずさ「初任給引き上げに関するお知らせ」2025年3月
・EY新日本有限責任監査法人「業務及び財産の状況に関する説明書類 第26期」
・PwC Japan有限責任監査法人「業務及び財産の状況に関する説明書類 第20期」
・各社有価証券報告書(M&Aキャピタルパートナーズ/ストライク/日本M&Aセンター/フーリハン・ローキー/フロンティア・マネジメント/山田コンサルティング 等)
・厚生労働省「令和6年賃金構造基本統計調査」/厚生労働省 job tag「公認会計士・税理士」
・MS-Japan「会計士の転職市場レポート2024」「公認会計士キャリアトレンドレポート2024」
・ヒュープロ/レックスアドバイザーズ/マイビジョン/ジャスネット/VRPパートナーズ/Bridge Agent/シンシアード/CPASSキャリア/KOTORA JOURNAL/MoneyForward/JAFCO

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